理事長あいさつ

【理事長 小笠原 嘉祐】

 当法人はハンナ・リデル、グレイス・ノットが1895年(明治28年)に、日本における福祉事業の先駆けとしての熊本回春病院を設立し今年で125年を迎えます。その後、エダ・ハンナ・ライトが引き継いで運営しました。熊本回春病院は、昭和16年に第二次大戦という戦争による困難な状況の中で、事業が廃止されました。戦争中の苦難の時代を切り抜け、戦後、養老院と児童福祉施設の二つの社会福祉施設を設立し、社会福祉事業としての新しい歴史が始まりました。そして、昭和45年から自律した社会福祉法人としての事業を開始。平成3年から少子高齢社会の到来を踏まえて、新しい時代の社会福祉事業、ことに、在宅福祉から地域密着福祉を重点課題として多様な施設体系をつくることにより、総合的な高齢福祉事業を出発させました。その後、今日まで30年間で大幅な規模の拡大と共に、16の多様な高齢者福祉事業を具体化させてきました。

 この30年の当法人の事業を進める上で、地域との関わりは重要な課題でした。特に黒髪、碩台、龍田の3地域を中心に地域との繋がりを重視することにより、高齢者の方々に対しての介護・福祉事業のみならず、新しい共生社会を展望した社会福祉事業に広げていく事が出来ました。

 さて、昨年は平成から令和へ年号が変わりました。引き続き少子高齢化という福祉にとって重要な課題が更に深刻化しています。今後、中長期的に2040年を見据えて、社会保障改革が様々な提案が行われています。また、持続可能な開発目標が国際的に重視されるようになり、いわゆる誰一人取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目標とすることが、広く求められるようになっています。国内では地域共生社会に加えて全世代型の社会保障が福祉・介護・医療の政策の中で重要な項目と捉えられるようになりました。我々はこれらを踏まえて、これまで平成の時代を通してつくりあげてきた地域福祉の実践をさらに全世代型でかつ地域の中で多様な柔軟な活動をしなければならないと考えています。 今後、令和の時代の要請にしっかりと対応できる体制づくりをしていきたいと考えていますが、 その基本には常に私たちが引き継いでいる125年の歴史の中で培われてきた「愛と奉仕の精神」を基本的に踏まえて、運営していかなければらないと思っています。

 これらの事業を行うためには、量的にも質的にも人材の課題は最も重要だと考えています。組織の規模が大きくなればなるほど業務の効率化はどうしても必要となるのですが、人が人に向き合う事が基本である我々の事業には、専門性を踏まえた有益な人材を増やす事が求められます。引き続き最重要課題としてこのことに取り組んでいきたいと思います。地域をはじめ、多くの皆様方のご協力をよろしくお願いいたします。

 また、社会福祉法人のアイデンティティーとしての公益的な事業は、生計困難者レスキュー事業をはじめとして取り組んでいるところです。今後、災害支援の為の持続的な体制づくりを含め、他の社会福祉法人との協力を構築しながら具体的な対応を組み立てていきたいと思います。

 今年は特に、今後中長期的に多様に柔軟に対応する為の体制作りを行いながら、職員一同努力してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

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